小説の中でも特にハマりやすいのがミステリー(推理モノ)だと思う。一度事件が起こった以上、そのタネを知らずにはいられないというのは、人間の性。
今回は、数多の推理小説の中でも、よりすぐりの推理小説を集めてみました。
ネタバレ一切なし!ついでに倒叙モノも一切なしで、あなたを謎解きの世界へ誘います。
目次
占星術殺人事件/島田 荘司
言わずと知れた島田荘司の代表作!名探偵 御手洗潔の登場作でもあります。
イケメンの天才で躁鬱気質の変わり者。弱者に対する視線が優しく、誰に対してもフェア、「女嫌いで犬が好き」という、人間的な魅力に溢れたかっこいいと思える探偵。天才ならではのひらめきで事件を見事に解決する様は実にスマートです。
この超絶トリックの解答者としてふさわしい名探偵。御手洗シリーズでは『斜め屋敷の犯罪』も秀逸なトリックが使われているのでそちらも是非。
十角館の殺人/綾辻 行人
驚天動地の仕掛けで新本格ミステリーの流れを作った立役者、綾辻行人の衝撃のデビュー作。
クローズドサークル、奇妙な建築物、連続殺人、名探偵と助手。さらには有名作家の名前が冠された登場人物たち。ミステリー好きにはたまらないガジェットがちりばめられ興奮必至。伏線の回収の仕方とアクロバティックなトリックは必読です。
たった一行で物語をひっくり返したその鮮やかさといったら!クリスティの『そして誰もいなくなった』を読んでいるとさらに楽しめるかも。
吸血の家/二階堂 黎人
旧家の美しい三姉妹、呪われた伝説、過去の事件、など小道具の仕立て方が横溝風につくられており、独特の雰囲気をがあります。
横溝 正史好きならさらに楽しめること請け合い。探偵役の蘭子の博識さと神がかった推理力に呆然となりつつもミステリー小説の醍醐味を味わえる一冊です。
密室に足跡のない殺人とミステリーファンには嬉しい設定で王道を行く面白さがあります。ちなみに二階堂蘭子シリーズの『人狼城の恐怖』は世界最長の推理小説の記録も持っているのでぜひ挑戦してもらいたいです。
翼ある闇/麻耶 雄嵩
おそらく反則。そのトリックは再現性がないだろうと思うけれど、ペダンチックな言説で勢いに乗って読まされるうちに、なぜか納得してしまう稀有な一冊。
探偵役のメルカトル鮎の初登場作にしてサブタイトル通り「最後の事件」タイトルからして人をくってる。洋館で起こる連続殺人と2人の名探偵という、推理小説の基本は押さえているにもかかわらずこの真相には衝撃をうけるはず。
好き嫌いと毀誉褒貶が激しく分かれそうですが、ミステリーの懐の深さを感じるにオススメの一冊。
雪密室/法月 綸太郎
密室モノとしてはスタンダードな「雪を使った密室」の作品。しかしそこは法月綸太郎、一筋縄ではいきません。
雪だけでなく、鍵も使い二重密室に!そしてそれをロジカルに解決する様はお見事。消去法を使うあたりがまた憎い。オーソドックスで正統派推理小説といった趣を感じる一冊です。
法月親子の初登場作品でもあるので、二人の関係性を理解する上でも必読。ただし、カーターディスクンの『白い僧院の殺人』のネタバレが本文に含まれるので未読の方はご注意ください。
双頭の悪魔/有栖川有栖
綾辻行人とともに新本格ブームを牽引した有栖川有栖の真骨頂。
綿密に張られた伏線、練られたプロットには構成の妙があります。徹底的にロジカルに謎を解く江神部長の名推理がスゴイ。
読者への挑戦がなんと3回も行われる大盤振る舞いなので是非挑戦してください。謎解きも勿論面白いですが、作者独特の詩的で情緒性のある文章が味わえるので青春小説としても傑作かも。
学生アリスシリーズの第三作にあたるので、是非とも前二作を読まれてからお楽しみあれ。
本陣殺人事件/横溝 正史
日本が誇る名探偵、金田一耕助初登場作!初登場なものだからなんと作中設定で20代という異例の若さ!!他の作品では、もう少し設定年齢が高いため、レアな金田一が見られます。
三本指の男や琴の音、惨劇の舞台となる旧家など、完璧な舞台設定が良く、密室に向かない日本家屋で密室を作り出した力業と、トリックの斬新さにもホレボレしてしまいます。
農村部特有の閉鎖的な雰囲気や、動機の旧弊さに時代の空気を感じることができる一冊です。日本の本格ミステリーを代表する作品で、推理小説というより、これぞ探偵小説と呼びたい。
容疑者Xの献身/東野 圭吾
映画から入った方も多いのでは?原作も素晴らしいので是非呼んでみてほしい。
トリックの秀逸さだけでなく、トリックに隠された動機の切なさに慟哭してしまう。本格ミステリーでは蔑ろにされがちな動機をメインにし、揺れる心情を丁寧にすくいとった傑作です。
東野圭吾の変幻自在な筆さばきで、驚きの結末まであっという間に読み進められます。この読みやすさが曲者で、するする読んでるうちにいつの間にか深いところへ運ばれて、思いもかけない地平を見せられる。手放しに絶賛したい一冊。
モルグ街の殺人/エドガー・アラン・ポー
推理小説の祖、エドガー・アラン・ポーの味わい深い一編。
今あらためて読むと、これはどうかな?というトリックかもしれない。が、この一冊があったからこそ、今の推理小説の隆盛があると考えると、やはり読まずにはいられない。
名探偵と助手、意外な犯人、密室、読者に開示されるすべての推理材料と、ミステリーの原型が詰まっています。気軽に読める短編でありながら、ここからミステリーというジャンルが確立していったかと思うと感慨深いです。
黄色い部屋の謎/ガストン・ルルー
密室を扱った古典的名作。この初版が1907年というのだから驚き。
年月を経ても色褪せない魅力があるのは、その物語が本物だからこそ。密室の謎、消失の謎、そして意外な犯人。もちろん時代背景や、ルールタビーユのセリフ回しには古臭さを感じずにいられませんが、その謎自体のきらめきは今でも厳然と輝いています。
100年前にもこうして人類はめくるめく謎に胸を躍らしていたのかと思うと、それだけでロマンを感じずにはいられません。
編集後記
推理小説の面白いところといえば、やはり読み進めながら、主人公よりも先に犯人を暴いてやりたいという気持ちになれるところでしょうか。
ん?こいつ怪しいぞ。と思いながら読み進めると、いつの間にか被害者となっていることが多いわけですが、その裏切りが大きければ大きいほど、読後感が心地よくなるもんです。
作風としては、京大ミステリ研究会の面々により新本格あたりが好みですが、ポーやルルーの作品も、今読み直すとまた違った面白みを感じます。